【お知らせ】「わたしのせんとうとまちー北区の記憶あつめー」特設サイト を公開しました
銭湯の現状

日本全国で銭湯の数は年々減少し、東京だけでも戦後2700軒近くあった銭湯は、2020年には500軒を切り、現在も止まることを知りません。家庭風呂の普及、後継者の不足や相続問題、建物の老朽化、燃料の高騰、地域の再開発など原因は複合的で、様々です。

一方で、心身を清める禊の文化と通ずるとも言われ、江戸時代にも大いに熟成された日本の入浴文化は、世界的に見ても特徴的です。地域の暮らしに根づき、コミュニティの場として長い年月をかけて地域を育んできたことも高く評価され注目されている点です。

活動の背景

せんとうとまちの前身となる地域活動(*)では、10年以上前より地域の消えゆく銭湯と向き合い、多くの銭湯が廃業・解体されると同時に、地域コミュニティも共に解体される現状を目の当たりにしました。ご近所の家族連れや小学生、唯一の楽しみと毎日通っていた高齢者が行き場を失い、世代を超えたふれあいも、銭湯に蓄積されてきた地域の歴史や物語も共に消え去りました。

また、近隣の商店が閉まり、空き家化や建て替えが進み、長く大切にされてきた街並みが消失し、地域一帯から活気が失われてゆく様子も見てきました。

それらの経験から、繊細に絡み合った銭湯を中心とした「地域の生態系」の存在を意識するようになりました。

(*)文京建築会ユースの活動。文京建築会を母体とする、文京区を中心に地域活動を行っている建築関係者の若手有志団体。せんとうとまちの構成メンバーが今でも運営の中心として関わっている。

せんとうとまちの思い

銭湯は、高齢福祉や子育て問題、防災や地域医療、そして地域や他者を知る場としての教育的な側面、世界的に深刻となる水資源問題においても可能性を秘めた場所です。昔ながらの空間を維持する銭湯は建築物としても価値があり、建物が建て替わっている場合でも、そこに蓄積された地域の歴史や物語は、地域のこれからを考えるための大切な資源と言えます。

一般社団法人せんとうとまちは、その名の通り、銭湯のみならず、銭湯とその周辺のまちを共に考え、再生・活性化していくことを目指しています。日々目まぐるしく変化する都市の多くでは、かつて緊密であった銭湯と地域住民、周辺の街並みや暮らし、住民同士の関係性が薄れつつあります。それらに丁寧に向き合い、新たに編み直しながら、地域の中での銭湯の存在感を取り戻すことで、銭湯の持つ文化的・社会的価値をこれからの地域社会に最大限に活かすサポートができたらと考えています。

たとえばこんな活動をしています

当団体は、北区滝野川稲荷湯における「稲荷湯修復再生プロジェクト」のスタートを機に、本格的にリサーチやサポート活動を行うために2020年に法人化しています。同銭湯では国の登録有形文化財申請のお手伝いに加え、ニューヨークに拠点を置くワールド・モニュメント財団へアプローチを行いました。

稲荷湯は、ノートルダム大聖堂やマチュピチュの文化的景観等の世界的な文化財と共にその価値が認められ、アメリカン・エキスプレスと財団の支援を得て、銭湯の修繕・耐震化や併設していた従業員用の長屋の再生工事を実施。

「稲荷湯長屋」は銭湯とまちの間のワンクッションとなるスペースを目指し、既存のコミュニティと若い世代や新住民とをつなぐ「湯上りどころ兼地域のサロン」として運営中です。<詳細はこちら>

こうしたサポートは、現在、他の銭湯でも進行中です。

全国各地の銭湯を舞台に、銭湯が地域にもたらす価値を高め、銭湯とまちとの持続可能なあり方を模索しています。同時に、私たちが取り組む様々なプロジェクトを通じて、銭湯を基軸に、地域の方々や同じ志を持っている全国各地の方々とのネットワークも育めたらと考えています。